福祉制度

うつ病で精神障害者手帳は取得できる?審査基準やデメリットまでを完全解説

うつ病で障害者手帳は取得できる?

この記事を読むのに必要な時間は約 8 分です。

「うつ病になったけど精神障害者手帳は取得できる?」

「精神障害者手帳は取得する意味ある?」

うつ病が長期化した時に取得することを検討する精神障害者手帳

しかし、どの程度の人が取得できるのか?取得してデメリットはあるのか?

など気になりますよね。

そこで、今回はうつ病で精神障害者手帳を取得した方がいい人や取得の基準

そして取得によるメリットを解説していきます。

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さらに、障害年金と精神障害者手帳との関わりも解説していきます。

\ この記事の監修者 /
仮屋 智之顔写真
就労移行支援事業所で支援業務に携わり、精神疾患や障害をお持ちの方のメンタルヘルスケアやキャリアアップのお手伝いをしています。

うつ病で障害者手帳を取得する基準は?

うつ病で手帳を取得する条件

まず前提として、精神障害者手帳の対象は

「精神疾患を有する者」となっており、その中の対象疾患に

躁うつ病」の項目があります。

この中で

「精神障害のため長期にわたり日常生活または社会生活への制約(障害)がある人」

従って、うつ病は精神障害者手帳の取得対象となります。

長期の解釈については、

初診日から6ヶ月以上経過している必要があります

 

うつ病による、日常生活・社会生活への制限の度合いにより精神障害者手帳の等級が決定されます。

参考:大阪市「精神障がい者保健福祉手帳

 

今回はうつ病での取得に限って解説していきますが、その他の精神疾患の基準は以下の記事を参考ください。

うつ病の障害者手帳の審査基準

それでは、具体的に審査基準を見ていきたいと思います。

主に以下の4つの項目により判定されます。

うつ病で精神障害者手帳の審査ポイント
精神障害者手帳の取得基準
  • 精神疾患の存在の確認 (精神疾患があるかないか?)
  • 精神疾患(機能障害) の状態(精神疾患の疾患別の程度)
  • 能力障害(活動制限)の状態(生活を送る上での障害の程度)
  • 精神障害の程度の総合判定 (②③を加味した障害の程度)

これらは、手帳申請時に主治医による診断書により記載され判断されます。

それでは、順番に解説していきます。

参考:精神障害者保健福祉手帳の障害等級の判定基準について

まず①については、すでにうつ病であり、

かつ前述した初診日より6ヶ月以上経過している事が条件です。

精神疾患の状態(機能障害) (うつ病の症状の程度)

②精神疾患の状態(機能障害)

機能障害とは、うつ病の場合

うつ病(気分障害)特有の症状がどの程度認められるか?がポイントとなります。

例えば、精神障害者手帳3級のうつ病の基準であれば

「気分(感情)障害によるものにあっては、気分、意欲・行動及び思考の障害の病相期があり、その症状は著しくはないが、これを持続したり、ひんぱんに繰り返すもの」

とあり、具体的には、

  • 躁状態では行動の抑えが効かない状態(行為心迫)
  • うつ状態では、何も手につかず、何もできない状態(行動抑制)

持続し、繰り返す事が認められる必要があります。

うつ病のうつ状態と躁状態のイメージまた、等級での違いについては精神障害者手帳2級であれば

気分(感情)障害によるものにあっては、気分、意欲・行動及び思考の障害の病相期があり、かつ、これらが持続したり、ひんぱんに繰り返したりするもの

とあります。

3級と比べると違いについては

著(いちじる)しいかどうか?つまり、症状の変化が目に見えてわかるほど等級が重く判定される傾向にあります。

能力障害(活動制限) (うつ病によりどれほど感情が制限されるか?)

③能力障害(活動制限)の状態

次に、能力障害については

うつ病によりどの程度、日常生活・社会生活に制限が生じているか?が判定されます。

具体的には、以下の項目が確認されます。

能力障害の判定項目
  • 食事
  • 清潔
  • 通院/服薬
  • 家族/知人関係
  • 市役所等の手続き
  • 趣味・娯楽への関心

では、具体的に精神障害者手帳3級を例にあげると

生活が制限される程度としては

「生活に対しては普段は自発的にできるが、日常生活に急激なストレスがかかった際などには援助を必要とする程度」です。

急激なストレスがかかった際に躁うつの症状(機能障害)が現れ、日常生活に支障をきたすイメージです。

実際の場面としては、2級の程度で言うと

一人で病院などにはいけるが、外出時にストレスがかかる状況になると対処が難しいといった形です。

うつ病で日常生活に支障をきたす例

なぜ、このような能力障害の判定が必要かと言うと

後ほど解説する

障害者手帳取得により利用できる障害福祉サービスの利用と密接に結びついてくるからです。

上記の例で行くと、同行援護と言うサービスが使え

外出時の症状に備えてあらかじめ、付き添いを利用する事が可能となります。

最後の総合判定に関しては

最後に②機能障害と③能力障害を勘案した結果となります。

うつ病で精神障害者手帳を取得する流れ

まず必要な書類として以下の2点があります。

精神障害者手帳の申請に必要な書類
  • 精神障害者保健福祉手帳申請書(市役所で入手可
  • 診断書(精神障害者保健手帳用

 

この「精神障害者保健福祉手帳申請書」については

最寄りの市役所の障害福祉課にて受け取る事ができます。

申請は原則本人ですが、病院の職員や福祉施設の職員でも代行する事が可能です。

申請先も先ほど述べた障害福祉課となります。

診断書についての注意点としては、必ず「精神障害者保健福祉手帳用」である必要があります。

(記入項目が異なるため)

手帳用診断書参考

うつ病で障害者手帳の申請にかかる診断書代

この診断書の料金については、一般的に原則、保険適用されません

精神障害者手帳の診断書代

すなわち実費での負担となります。

また、同様に申請時に診断書が必要な自立支援医療の診断書より記入項目が多いため、

その分料金は割高になり

一般的に8,000〜11,000円ほどの料金となる事が多いです。

うつ病で精神障害者手帳を取得したら障害年金は取得できる?

うつ病においても障害年金は取得できます

また、精神障害者手帳を持っていなくても障害年金を受給できます。

ここで注意が必要なのは、障害者手帳の等級と障害年金の等級は異なる事です。

障害者手帳の要件の方がより広いものとなり、

 

先に障害年金3級を取得している方については

  • 年金証書の写し
  • 年金振込通知書の写し
  • 年金証書についての照会同意書

3点により無条件で取得が可能となります。

以下は、精神障害者手帳と障害年金の等級の対応を図解しております。

障害年金と精神障害者手帳の範囲

 

簡単にではありますが、障害年金の受給要件を記載しておきます。

以下の3点より受給が確定されます

  • 初診日
  • 保険料納付
  • 障害状態
障害年金の受給要件

まず、うつの状態の初診日を書類等において明らかにします

なぜ、初診日が重要かと言うと

うつの状態となった初診日において、

厚生年金及び基礎年金の被保険者期間か?」が重要となるためです。

 

原則、障害年金は厚生年金被保険者と基礎年金の被保険者しか受給する事ができません。

そして、その被保険者期間の判定は初診日においてなされます

特に障害基礎年金に置いては、20~60才までは強制加入のため被保険者となりますが

障害厚生年金については、加入期間が労働している期間のみとなります。

初診日の証明においては、文書で客観的に証明されなければならず

主に、受診状況等証明書などの文書を最初にかかった医療機関に請求する必要があります。

 

前述の障害状態で記載した等級となります。

ガイドラインに従い、主に日常生活の能力について医師より点数がつけられます

等級の判定は異なりますが、精神障害者手帳と非常に似通った形の判定基準となっております。

この点数により、障害年金の受給の有無が確定されます。

簡単に障害年金の判定書を以下に記載しております。

障害年金等級判定の診断書例 障害年金の等級目安

参考『国民年金・厚生年金保険 精神の障害に係る等級判定ガイドライン』等

障害年金の受給は初診日の特定など、個人では受給が難しいケースが多々あります

障害者手帳の取得と合わせて、障害年金受給をご検討の方は

障害年金を専門とする社会保険労務士に依頼する事をおすすめします。

うつ病で障害者手帳を取得した際のメリット

それでは、実際精神障害者手帳を取得した場合のメリットについて解説していきます。

主に、3つの観点からメリットを整理していきます。

障害者手帳取得の3つのメリット
  • 民間の精神障害者に関する割引
  • 障害福祉サービス
  • 障害者雇用枠の活用
うつ病で精神障害者手帳を取得する3つのメリット

民間の精神障害者に関する割引

民間の精神障害者に関する割引でもっとも代表的なものは、

携帯電話会社による割引です。

例えば、NTT DOCOMOの5Gの通信容量無制限のプランでは、

月額の基本利用料7315円から5808円まで、毎月約1500円程の割引となります。

DOCOMO携帯電話料金の割引

また通話オプションの面では

かけ放題で 1980円から1,100円までの約880円の割引があります。

これは、うつ病等を精神障害者手帳の所持者の場合

健常者以上に電話をする機会が増えることを配慮しての事です。

特に不穏時などにたくさんの電話をして、電話料金に悩まされる場合は積極的に活用したいです。

参考:

NTT DOCOMO ハーティ割引

au スマイルハート割引

ソフトバンク ハートフレンド割引

次点では、タクシーに関する割引です。

疾患の特性上どうしても移動祭に電車では難しい側面があるかと思います。

そんな時、日本交通株式会社では、障害者手帳の提示で一律10%の割引を行なっております。

こちらも、通院時など状態により電車が難しい場合は活用したいです。

参考:日本交通株式会社 障がい者割引について

障害福祉サービスの活用

次点でのメリットは障害福祉サービスです。

障害福祉サービスとは、障害者総合支援法に基づき

それぞれの障害の度合い(これを障害支援区分と言います)

に合わせて、日常の生活面や社会生活の面で様々なサービスを受ける事ができます

大きく分けて、介護給付と訓練等給付に分けられ

介護給付と訓練等給付のイメージ

介護給付では、日常生活の困りごとをサポートするサービスを

訓練等給付では、就職の支援を行う就労移行支援や、作業所などの就労継続支援B型などの利用資格を得る事ができます。

より詳しくは以下の記事で紹介しています。

ここでは代表的なサービスを紹介致します。

うつ状態の不穏時など無気力な時に

もっとも利用機会が考えられるのは、やはり居宅介護(ホームヘルプサービス)

です。

居宅介護 (ホームヘルプサービス)の説明

主に、調理・洗濯・買い物・掃除など家事や病院の受診や手続きなどが精神障害を理由とした本人の困っている事案に合わせて柔軟にサービスを利用でき、

うつの症状により困ったらまず最初に検討したいサービスです。

 

他にも、障害者で共同で住むことができる住宅「共同生活援助」や、就職のサポートを行う「就労移行支援」など

日常生活・社会生活の様々な側面においてサポートが存在します。

精神障害者雇用枠の活用

平成30年4月より、精神障害者も障害者雇用義務の対象に加えられたことで

うつ病の方も障害者雇用枠を活用できます。

令和4年のデータでは、民間で働く障害者のうち

約11万人が精神障害者であり、

ここ5年で倍以上に伸びています

精神障害者雇用の推移

その背景としては、精神障害者の退職率が非常に高い現状を受け

短時間労働者を積極的に認める国の方針や就労移行支援の充実などがあります。

 

もし、フルタイムでの勤務が難しい場合や

少し多くの休憩が必要な場合は精神障害者雇用を積極的に検討したい所です。

参考:令和3年 障害者雇用状況の集計結果

精神障害者枠の利用方法

うつ病の方が精神障害者枠を利用するの際の注意点について、

もちろんハローワークに行き、障害者枠を自分で探しても良いのですが

障害者枠の場合、通常の転職・就職活動と異なり

面接時の障害特性の説明

書類選考時の就労パスポートの提出などがあります。

就労パスポートとは、主に企業に対して障害の特性を説明するために用いられ

ここにボックスタイトルを入力
  • 体調管理と希望の働き方(勤務時間やストレス、休暇)
  • コミュニケーションの手段
  • 作業の正確性
  • 仕事上のアピールポイント
  • 職歴や就労支援機関での経験

などを記入します。

 

採用を行う企業としても、通常の採用と異なり

自社の業務が、その方の障害とマッチするかが非常に重要です。

そのため、応募の際に障害者雇用枠の面接でも自身で特性を説明する能力は重要となるのです。

 

就労パスポートの作成や障害者枠の面接の練習については、

地域障害者職業センターやハローワークの障害者の窓口、

そして、前述の障害福祉サービスである就労移行支援の活用などが考えられます。

就労移行支援に関しては、前年度の収入の状況により利用に関しては費用がかかりますが、

相談は無料です。

地域障害者職業センターやハローワークについても無料で相談できます。

障害者雇用を検討して、なにから手をつければ良いかわからない場合は

まずは相談してみましょう。

うつ病で障害者手帳取得のデメリット

それでは。次に障害者手帳を取得した場合のデメリットを解説してみます。

もっとも、不安な事について真っ先にあげられるのが

やはり、「今勤めている職場にバレないか?

言わなければならないのか?

かと思います。

結論から言うと、職場に申告する必要はありません。

さらに障害者手帳も障害年金も個人情報保護の観点からバレる事はなく、

仮にバレたとしても障害者である事を理由に解雇をはじめ不当な扱いは障害者差別解消法により禁止されています。

特に携帯する義務ありませんので、前述したサービスを受けるときだけ

持ち歩き提示する形で差し支えありません。

 

合わせて、障害年金も20才以上で受給が開始された場合は所得制限もなく

さらに全額非課税となりますので、

年末調整の際に気にする必要はありません。

参考:日本年金機構「非課税所得

 

うつ病の医療費について

医療費の面では、自立支援医療(精神通院医療)が利用できます

こちらは精神障害者手帳なくとも初診日より申請する事で利用する事ができます

制度の概要としては、医療保険の負担額が一律10%となり

月ごとに医療保険利用時に所得によって定められた上限の自己負担額まで達するとそれ以降の医療費は無料となります。

所得別の自己負担額は以下の通りとなります。

生活保護世帯 0円
市町村民税非課税世帯で障害基礎年金2級(月6.6万円)のみ受給程度  2,500円
市町村民税非課税世帯  5,000円
市町村民税課税で市町村民税額(所得割)が2万円未満  5,000円
市町村民税額(所得割)が2万円以上20万円未満  10,000円
町村民税額(所得割)が20万円以上  20,000円

表の参考:厚生労働省「自立支援医療

うつ病で障害者手帳を取得するメリットまとめ

今回はうつ病の方で障害者手帳を取得するメリットや障害者年金との関わりについて解説いたしました。

もし、取得を迷っている方はこちらの記事を参考に取得をご検討ください。