精神障害者手帳

障害者雇用で精神障害2級の給与や仕事への就き方は?障害年金の減額も含めて解説

精神2級の障害者雇用の現状は?

この記事を読むのに必要な時間は約 9 分です。

「精神障害者手帳2級と判定されたけど、みんな働いてるのかな?」

「精神障害者手帳2級におすすめの仕事は?」

精神疾患で日常生活や社会生活において障害を感じた際に、所得できる精神障害者保健福祉手帳。

真ん中の等級となるのが2級で、障害年金2級を受給している方も多いのではないでしょうか?

そして、無理のない範囲で働いてみたい方や仕事を探している方も多いかと思います

 

結論から申し上げると、精神障害者手帳2級で働いてる方は非常に多く求人も多いです。

今回は、精神障害2級の雇用現状やおすすめの仕事

そして、実際の仕事の探し方なども含めて解説致します。

\ この記事の監修者 /
仮屋 智之顔写真
就労移行支援事業所で支援業務に携わり、精神疾患や障害をお持ちの方のメンタルヘルスケアやキャリアアップのお手伝いをしています。

 

おすすめの仕事や具体的な就き方へスキップ

精神障害者雇用の中心は精神障害2級と3級!

実は、精神障害を持ちながら障害者雇用で働いている方は2級と3級は同程度に多く、全精神障害者雇用の約3分の1となります。(35.5%)にもなります。

ですので、精神障害2級で働くことはそれほど不思議な事ではありません。

精神障害者雇用の等級割合円グラフ

参考:厚生労働省「令和5年度障害者雇用実態調査結果報告書

 

さらに、精神障害者雇用の約半数(47.2%)はフルタイムで働いていますので、

正社員として働いておられる精神障害者2級の方が非常に多いことがわかります。

精神障害者雇用の労働時間別円グラフ

また、平成30年4月より精神障害も障害者雇用義務化の対象に加えられた事により

この年より毎年10%ずつ就職者数も求人も増えております

特に「医療、福祉」、「製造業」、「サービス業(他に分類されないもの)」、「卸売業、小売業」において引き続き求人数が大幅に増加しています。

参考:厚生労働省「令和4年度ハローワークを通じた障害者の職業紹介状況

精神障害者雇用の現状については以下の記事でより詳しく解説しております。

障害者雇用を希望し、医師より就労の許可が出た方は積極的に就職活動を行うと良いでしょう

次の項目より、精神障害者が働くことを検討した際に検討したい選択肢を解説していきます。

精神障害2級で働く事を検討した時の相談先

働くことを考えた際に何からスタートすれば良いか悩むかた思います。

具体的に精神障害者雇用で働くことを検討した際の具体的なアクションの選択肢について解説していきます。

精神障害者雇用を検討した際の相談先

また、それぞれどのような方におすすめのサービスかも紹介します。

就労移行支援

精神障害2級で障害者雇用を検討した際の第一、選択肢は就労移行支援です。

精神障害者手帳で利用が可能で、

(手帳を所持していなくても利用できます。)

通いながら就職に必要な技能を身につけると共に、

就職先のサポートや面接、書類対策など必要な手順は全て完結します。

また、就職して終わりではなく就労定着支援と呼ばれる

就職先でしっかり働き続けることができるか?

企業との架け橋となってくれます。

事業所毎に、得意としている就職先や障害が異なるため、自分で最適な事業所を選ぶ必要があります

(どの事業所も原則、見学や無料体験を行なっております。)

就労移行支援の利用料は、就職実績が高い事業所であれば

一日あたりの利用料が高い傾向にありますが

就職実績10%以下の事業所では1日あたり500円程度。

50%以上で1200円

こちらについても、現時点で働いてなく市町村民税非課税世帯や、障害年金のみで生活している場合や生活保護であれば無料で利用できます

また、事業所によっては交通費や教材のサポートも行なってくれますので

キャリアの第一歩目としては最適でしょう

就労継続支援B型

雇用契約を結ばずに、就労移行支援などを利用しても就職に結びつかなかった方が通える就労支援施設がこの就労継続支援B型となります。

あくまでも雇用契約を結ばずに、

生産活動の場を提供するサービスを受けながら就職に必要な技能を見つけるサービスとなっており

お給料は発生しますが、その額が全国平均で16000円ほど

(厳密には給料ではなく、工賃と呼ばれます。)

参考:厚生労働省「令和3年度工賃(賃金)の実績について

となっております。

生産活動といっても事業所事に様々な種類があり、

自分に合った興味のある生産活動を選択し利用できます。

いきなり障害者雇用での就職は難しいが手を動かしてみたいという方におすすめです。

就労継続支援A型

雇用契約を結ばずに生産活動を行う就労継続支援B型に対して、

雇用契約を結び、一定の障害に対するサポートがある職場で働くのが

就労継続支援A型となります。

雇用契約を結ぶため、最低賃金が保証された形で働くことができます

しかしながら、通常の企業のように面接などもあるため

就労移行支援を利用して、障害者雇用が難しいと感じた場合や

就労継続支援B型のステップアップとして利用すると良いでしょう。

障害者雇用代行業者

次の選択肢としては、昨年度非常に話題となった障害者雇用代行業者。

職種としては、主に農園など畑がほとんどなり、作業の性質上

就労継続支援B型に近いですが

雇用契約が結ばれた上で行われるため就労継続支援B型の作業内容でありながら、A型の賃金が発生します。

仕組みとしては、昨今障害者雇用率の上昇に伴い

自社での雇用のノウハウが難しい企業に対して、

障害者雇用代行業者が農園の提供と雇用管理を行います。

給与に関しては、雇用契約を結んだ上で企業から支払われるため障害者雇用率の未達成を回避できます

読んでいてお気づきかと思いますが

非常に賛否が多いビジネスとなっており、国会でも問題点が取り上げられております。

厚生労働省「いわゆる障害者雇用ビジネスに係る実態把握の取組について

しかしながら、とにかく日中の生産活動をお金を得ながら行いたい方は

利用すると良いかと思います。

障害者雇用代行業者として上場しているエスプール株式会社

(障害者雇用代行業者として有名なエスプール株式会社のホームページ)

在宅テレワーク系障害者雇用

数は少ないですが、在宅ワークを中心に障害者雇用を行う企業もございます

参考:株式会社OSBS

しかしながら、人気のため応募が殺到すると同時に数が少ないこと、主に企業のバックオフィス業務を担うため非常に高度なPCのスキルが要求されます。

ルートとしては、就労移行支援などを経由して行うことが近道となります。

また、先ほど紹介した障害者雇用代行業者において

農園ではなく、オフィスワークを中心に行なっている企業もございます

参考:障がい者専用サテライトオフィス運営「株式会社ありのまま」

こちらも数は少なく応募過多の状態のため、就労移行支援などを経由することが一般的となります。

障害者就業・生活支援センターやハローワーク障害者専用窓口

最後に、国が行なっているものを紹介します。

まず初めに、利用しやすいのはなんといってもハローワーク障害者専用窓口です。

参考:ハローワーク障害者専用窓口

ハローワークは企業対する障害者雇用の管理や、助成金のサポートも行なっている中核機関のため

履歴書の書き方から求人の探し方まで丁寧に案内してくれます。

また、具体的な就職準備のサポートを行なってくれるのが

ハローワークより紹介される障害者就業・生活支援センターとなります。

通称「しゅうぽつ」や「なかぽつ」と呼ばれ

主に障害者が就職活動を行うにあたって、適職検査や職場実習の斡旋なども行なってくれます。

障害者雇用準備の中核的な機関として、必要に応じて

今必要な支援を適切にマッチングしてくれます。

精神障害者2級の方におすすめの仕事と実際

それでは実際に、精神障害2級の方が働くうえでおすすめの仕事を紹介していきます。

現在では、就労移行支援の充実により様々な職業の選択肢が増えました。

令和5年のデータを元に、実際に働いている方の多い職業とその中でのおすすめの職業を解説していきます。

精神障害者の職業トップ3(令和5年最新)

参考:厚生労働省「令和5年度障害者雇用実態調査結果報告書

事務職(精神障害者雇用の29.2%)

1位事務職で働く場合の具体例

精神障害者の方が最も多い職業がこの事務職となります。

活躍の場としては、主に以下のような仕事なります。

  • 企業の総務部・経理部
  • 人事部の障害者雇用枠
  • 病院や介護施設等の事務職員
  • バックオフィス系特例子会社

サテライトオフィスでは企業のバックオフィス運営となります。

求人数もダントツで多いことが特徴です。

参考:令和4年度 ハローワークを通じた障害者の職業紹介状況

事務職までのルート

おおよそ、基礎的なPC操作を教えていて、かつ実績が豊富な就労移行支援で通所後就職すると良いでしょう。

また、バックオフィス系の障害者雇用代行業者に問い合わせるなども一つの手です。

 

専門・技術系の職業 (精神障害者雇用の15.6%)

2位専門職で働く場合の具体例

次点で多いのがこの専門・技術系の職業となり、主に以下のような仕事となります。

  • 法務の職業
  • 経営・保険の専門的職業
  • 教育の職業
  • 看護師・介護士・介護士
  • エンジニア
  • Webデザイナー

特に最近、多くなっているのが専門職となり、特に福祉業界・IT業界の求人が牽引しています。

専門・技術系の職業までのルート

WebやIT系の職業でについては、専門の就労移行支援がありそれらで学んだのちに就職されています。

主に発達障害者が多い傾向にあります。

また、最近は法律事務所や税理士事務所が積極的に障害者雇用を進めている現状があります。

自身も資格取得を念頭におきながら働くことも良いでしょう。

医療・福祉業界についても非常に求人が多く、支援者側に回ることも良いかと思います。

運搬・清掃・包装等の職業 (精神障害者雇用の11.1% )

3位運搬・清掃・包装で働く場合の具体例

定型的な作業が多い職種となり、あまり人と関わらず黙々と仕事に取り組みたい方におすすめな業種です。

主に以下のような職業となります。

  • ビルメンテナンス
  • 工場内の作業
  • 倉庫内の作業

身体障害者や知的障害者も含めて、昔から非常に多い仕事となります。

運搬・清掃・包装等の職業への就き方

最近では、外資系のAmazonの工場などの求人が増えてきております

また、地方の製造業などは慢性的に人手不足のため求人を積極的に探すと良いでしょう。

しかしながら、後述しますが

地方や企業規模の少ない会社は精神障害者の定着率が低い傾向にあるため注意が必要です。

精神障害2級の就労が増えている要因

では、ここまで具体的な選択肢を解説してきてなぜここまで

精神障害2級の就労が増えている要因を解説していきます。

精神障害雇用の増加要因

1.精神障害者雇用の義務化

まず、第一要因として挙げられるのは精神障害者雇用の義務化です。

平成30年4月度より障害者雇用義務化の対象に精神障害者が加えられた影響です。

実際、精神障害者雇用の義務化が始まった平成30年4月度時点での雇用数は

約6万7000人ですが、

5年後の令和4年4月時点では、約11万人まで増加しています。

精神障害者雇用の推移

参考:厚生労働省「令和3年 障害者雇用状況の集計結果

2.合理的配慮(障害者差別解消法)

この記事を執筆している令和6年4月段階で、障害者差別解消法が改正され

民間事業者の障害者への合理的配慮が義務化されます。

それに伴い、障害者の職務環境における配慮も必然的に義務化となりました。

より働きやすい環境が提供されている現状があります。

以下は企業が精神障害者に行なっている配慮事項となります。

 

3.障害者雇用率の上昇

次点で挙げられるのが、障害者雇用率の上昇です。

現状、令和5年時点で2.3%となっておりますが

この数字は令和6年で2.6%、令和8年で2.7%と段階的に引き上げられていきます

精神障害者雇用の雇用率の推移

身体障害者や知的障害者に関しては、手帳発行数が横ばいですが

精神障害者や発達障害者に関しては年々増加傾向にあります。

 

それに伴い、雇用率が上昇し求人枠が多くなっている現象があります。

障害年金を受給しながら精神障害者雇用は大丈夫なの?

精神障害者手帳2級の方には、障害年金を受給していて働いても大丈夫か悩んでいる方も多いかと思います。

結論から言えば、大丈夫な場合が多いです。

まず、精神障害者の34.8%の方は働きながら障害年金を受給しています

しかしながら、障害年金には永久認定と言われる

永久的に受給金額が変わらないケースと

有期認定と呼ばれる、1~5年の期間を定めて受給が行われるケースがあり

精神障害の場合は、後者の有期認定となります。

都度、金額も含めた更新手続きが求められます。

この時、精神疾患の状態が軽くなった結果働けている場合、その状態が折り込んで等級が下がる可能性はあるかと思います。

しかし、精神疾患の状態として

人と会うなどの社会生活の改善が見られない中でもなんとかテレワークなどの仕事しているなど

精神疾患の状態は改善されていないが、疾患と付き合いながら働いていると判断される場合は、等級が下がる可能性は低いと思われます。

つまり障害者雇用の場合、障害と付き合いながら働くため更新時に停止される可能性は低いです。

この部分に関しては、

状態を言葉で説明する必要があり、専門の社会保険労務士などと

あらかじめ相談しながら、進めていくと良いでしょう。

参考:障害年金制度

 

精神障害2級の就活のポイント

それでは、実際に就職活動を始める際に企業選びできをつけるポイントを解説していきます。

まず、前提となるのは必ず何かしらの形で支援者をつけることをおすすめ致します

前述した、障害者就業センターや就労移行支援などです

理由としては、会社側はそれぞれの精神疾患の症状については熟知しておらず

あくまでもどのような合理的配慮をすれば良いか?という視点だからです。

後述の面接の項目で詳しく解説しますが、ポイントとなるのは企業サイドに自身がどのような配慮が必要か正確に伝えることです。

精神障害2級の企業選びで気を付けるポイント

まず、企業選びについては

自分一人で探す場合は、ハローワークの障害者専門窓口に相談すると良いでしょう。

就労移行支援などを利用する場合は、一緒に企業選びを行なってくれます。

ここでのポイントは初めての方は、未経験の職種の場合は

精神障害者の雇用実績のある企業や大きい企業を選択する事です。

というのも、小規模な企業の場合精神障害者の職場定着率が極めて低い状況にあります。

理由としては、初めて精神障害者を雇用する場合

社内のサポート体制も完備されていませんし、ノウハウも少ない可能性があります

そのため、比較的経験の豊富な企業や特例子会社を選ぶと良いでしょう。

ただし、すでに経験のある業種などでは

比較的スムーズに働ける傾向にあります。

また、障害者合同面接会などもありますので

そちらで実際に話を聞いてみるのも良いでしょう。

参考:大阪府障害者合同面接会

精神障害2級の書類選考や面接では企業はここを気にしている

企業選びを終えたら、実際に応募するフェーズに入っていきます。

書類選考や面接で企業にみられる事は

精神疾患と上手に付き合えながら働けるか?

という事です。

令和6年4月に施行された改正法律「障害者差別解消法」において、

事業者の障害者に対する合理的配慮が義務化されました。

参考:内閣府「令和6年4月1日から合理的配慮の提供が義務化されます!

企業側としても、雇い入れを行う精神障害者にはどのような合理的配慮を提供すれば良いか判断する必要があります

雇われたいからということで、隠すのではなくしっかりと症状と、

企業側に求める配慮を説明しましょう。

ここで、利用したいのが就労パスポートです。

就労パスポートで記入するもの

就労パスポートとは、

精神障害者雇用の面接において、企業側の理解を促すために

精神疾患の状況や服薬状況、求める配慮などを記載する国指定のシートのことで

しっかりと活用する事で、企業と障害者の間で相互に理解が深まります

作成にあたっては、ハローワークやしゅうぽつ、就労移行支援の支援員と一緒に作成するのが良いでしょう。

また、面接時において一人で説明が不安な場合、

精神障害者雇用面接の多くは

就労支援スタッフの同席が可能です。

積極的に活用していきましょう。

精神障害2級のお給料で一人暮らしはできる?

ここまで、解説してきて一人で生活できるだけの給与が得られるか気になる方も多いかと思います。

結論から言えば、可能です。

精神障害者の平均給与

精神障害者雇用の平均給与は約15万円となっておりますが、

この給与の平均値の半数は、週30時間以下の短時間労働者の月給が含まれております。

また週30時間以上働いている方(1日6時間以上労働)の月給は19 万3千円

 

従って、正社員で働いた場合は

障害者だから給与が低いといった事はなく

通常通りで一人暮らしは可能と言えるでしょう。

精神障害者でも働けるバイト

また、障害年金をもらいながらアルバイトも可能です。

特に就労継続支援A型は最低賃金が保証されますし

企業でも、精神障害者の場合は

短時間労働者であっても障害者雇用の算定基準となるため

積極的に雇用を進めています。

(全精神障害者雇用の68.3%は非正規雇用。)

 

なので、こちらも積極的に就労支援機関を活用すると良いでしょう。

精神障害2級で働けないのはダメな事ではない。

ここまで、精神障害2級の働き方について解説してきましたが

あくまでも、精神障害2級という状態は精神疾患により日常生活や社会生活に障害が発生している状態です。

そのため、無理に働くという選択をする必要はないという事です。

精神疾患の場合は、状態に波があり

特に急性期などや気分障害の方の躁状態の時は

無理に働こうとしてしまう場合もあります。

あくまでも医師としっかりと相談して就労の可能性について見極めながら判断して下さい。