「精神障害者手帳2級と判定されたけど、取得のメリットは?」
「精神障害者手帳2級から3級になったけど、何が変わるの?」
様々な社会生活の場面で、サービスを受けることができる精神障害者手帳2級。
しかし、取得時に特にこれといった説明もないためどのようなメリットがあるか把握しきれていない方も多いのではないでしょうか?
そこで、今回は精神障害者手帳2級の取得のメリットについて解説していきたいと思います。
又、精神障害者手帳3級から2級となった方へ、3級とのメリットの違いも解説させて頂きます。
当記事では、「精神障害者保健福祉手帳」を簡略的に「精神障害者手帳」と簡略的に呼称しております。
- 精神障害者手帳2級で受けられる公的支援を知りたい
- 精神障害者手帳2級で受けられる民間の割引を知りたい
- 精神障害者手帳2級でもらえる手当を知りたい
精神障害者手帳(精神保健福祉手帳)を取得する最大のメリット
元々、障害者手帳の始まりは1950年の身体障害者手帳 がスタートされ、その後の1973年に知的障害者に対する療育手帳、そして1995年にこの精神障害者保健福祉手帳がスタートしました。
では、なぜこの障害者手帳が必要なのか?
手帳を所持する事で障害者総合支援法の対象となり、
精神疾患により生まれる社会生活や日常生活の障害を取り除けるようなサービスを享受できる点に最大のメリットがあります。
具体的には、指定障害福祉サービスの対象となります。
障害者総合支援法の最大の目的は、共生社会の実現です。
障害がある方もない方も、障害福祉サービスを活用する事で同じように生活する事を目指しています。
また、精神障害者手帳も含めた障害者手帳を持つ事により受けられるメリットは以下の記事をご覧ください。
精神障害者保健福祉手帳2級ってどんな人
では、具体的に精神障害者2級がどの程度の障害なのか?
解説していきたいと思います。
判定基準としては、
「精神障害の状態が、日常生活に著しい制限を受けるか、又は著しい制限を加える必要のある程度のもの」
とあります。
これだけでは少し難しいので、具体例としてポイントを解説いたします。
例えば、
- 部屋の掃除など清潔保持では自発的にできない
- 食事をバランスよく用意するなどは助言が必要
- 自ら外出はできるものの、ストレスがかかる状況では対処が困難(ただし、病院などの習慣化した外出はできる)
(「精神障害者保健福祉手帳の障害等級の判定基準について」を元に監修者が作成)
などがあげられます。
より詳細な日常生活の制限に関しては
以下のような基準を元に、医師より日常生活に支援が必要なレベルが判断されます。
精神障害者手帳2級の取得の流れと必要なもの
精神障害者手帳2級の取得には、大きく分けて二つのパターンがあります。
一つは、先に障害年金を受給している場合は年金証書の写しがある場合、市役所への申請のみで取得できます。
もう一つは先に、精神障害者手帳2級を取得するパターンです。
この場合は、前提として初診日から6ヶ月経過していないと手続きができません。
それを踏まえた上で、
以下の書類が必要となります。
- 精神障害者保健福祉手帳申請書
- 医師の診断書
1の「精神障害者保健福祉手帳申請書」については、最寄りの市役所にて取得が可能です。
(市町村により異なりますが、主に障害福祉課に備え付けてあります。)
2の「医師の診断書」については、かかりつけの精神保健指定医によるものが必要で、この時、前述の「日常生活状況の判定書」が添付されます。
これにより、精神疾患によりどの程度の障害があるか判定されます。
又、この診断書は保健適用外の実費となります。
通常の精神科であれば、精神障害者保健福祉手帳の診断書といえば伝わります。
値段の相場としては平均8,000〜11,000円程度となります。
書類が揃ったら、居住地の市役所の障害福祉課に申請を行います。
精神障害者手帳3級と2級の違い
精神障害者手帳3級と2級では、主に日常生活を
どの程度送る事ができるかの程度によって変わってきます。
例えば、精神障害者手帳3級の場合は日常生活をほぼ一人で送る事ができるがストレスがかかると不安定になる人が対象となります。
一方、精神障害者手帳2級の場合は、ときどき他人の助言や援助がないと日常生活を送る事ができない方を対象としています。
これにより、後ほど説明する「障害福祉サービス受給者証においてどの程度サービスを受ける事ができるか?」
といった事や
「生活保護における障害者加算があるかどうか?」
などに影響が出てきます。
精神障害者手帳2級のメリット①手当に関するもの
まずは、手帳を取得する事により得られる可能性のある手当について解説します。
いずれも、所得制限等があるため注意が必要です。
特別障害者手当
精神障害者2級であれば、必ず受け取れるものではありませんが
受け取れる可能性も非常に高いのが、この「特別障害者手当」となります。
支給の要件として「常時特別な介護」とあり、日常生活が困難で精神疾患により特殊な介護サポートが必要な方は検討しても良いかと思います。
支給額として月額 27,980円となり、2、5、8、11月に支給されます。
ただし、所得制限があったり、入所施設にいる方は受給できませんので注意が必要です。
参考:厚生労働省「特別障害者手当について」
生活保護における障害者加算
生活保護受給者で、精神障害者手帳2級以上であれば障害者加算が適用されます。
1級地であれば、月額17,530円が適用されます。
障害年金2級(障害厚生年金2級)
精神障害者手帳2級と障害年金2級の条件は全く同じではありませんが、日常生活状況の判定において、重なる部分も非常に多くなります。
従って、精神障害者手帳2級を取得できた場合は合わせて障害年金2級の申請をおすすめします。
市町村が独自に行う手当
手当の中には、精神障害者手帳2級の所持を要件として年1回程度の手当の支給を行っているところもあります。
名称としては「障害者福祉資金」「福祉年金」「心身障害者福祉金」などがあります。
都道府県 | 名称 | 金額(年額) | 備考 |
富山市(富山県) | 心身障害者福祉金 | 18,000円 | 市町村民税非課税 |
姫路市(兵庫県) | 障害者福祉資金 | 23,000円 | 世帯の所得制限 |
西脇市(兵庫県) | 福祉年金 | 18,000円 | 市町村民税非課税・1年以上の居住 |
その他の市町村でも、居住により独自に手当を支給している場合があるので、興味のある方は一度ご覧ください。
精神障害者手帳2級のメリット②医療費の助成
精神障害者手帳2級に限らず、自立支援医療による自己負担限度額の助成が適用されます。
医療保険で3割の医療費を負担しているところを1割に軽減します。
(例:かかった医療費が 7,000 円、医療保険による自己負担が 2,100 円の 場合、本制度による自己負担を 700 円に軽減します。)
この1割の負担が過大なものとならないよう、1か月当たりの負担には上限を設けています。上限額は、世帯(※1)の所得に応じて異なっています。
さらに通常の精神通院医療と合わせて、各都道府県や市町村が医療費の助成を行なっている場合があります。
例えば、愛知県であれば精神障害者手帳1級又は2級の場合は医療費が全額助成されます。
参考:愛知県「精神障害者医療費助成制度」
(大阪府や東京都では、精神障害者手帳1級からとなります。)
障害者手帳での助成についても、各市町村が独自に行なっているものが非常に多いため積極的に問い合わせて活用していきたいです。l
精神障害者手帳2級のメリット③民間の割引に関するもの
精神障害者手帳を持つことによる民間の割引については、
ほとんどが3級と同じものとなります。
より詳しくは、以下の記事にある民間の割引についてご参照ください。
公共料金については、電気・ガスなどの公共料金の割引はなく
水道料金やNHK受信料の割引については精神障害者手帳1級からのサービスとなります。
乗り物に関する割引
タクシーやバスも精神障害者手帳を持つ事で割引がされます。
タクシーの場合は、一律10%の割引。
バスについても、会社によっては精神障害者手帳で割引が行われます。
例えば、大阪府内の場合は、以下のバス会社のもの
- 水間鉄道(株)
- 北港観光バス(株)
- 奈良交通(株)
- 高槻市営バス
- 大阪バス(株) ※市内路線バスのみ
参考:大阪府「障がい者の交通機関における運賃割引に関する情報」
電車料金に関しては、原則、身体障害者と知的障害者のみに適用される場合がほとんどですが、一部の路線で割引がございます。
詳しくは、下記のリンクを参考にしながら、利用する駅にてお問い合わせくださいませ。
参考:公益社団法人「全国精神保健福祉連合会」:精神障害者保健福祉手帳運賃割引有無一覧(鉄道編)
精神障害者手帳2級を持つことによるスマホ料金の割引
スマホ料金も精神障害者手帳を提示することで割引される代表的なものです。
例えば、NTT DOCOMOの場合
eximoプランでは、データ通信量をどのプランにしても
基本料金から一律1507円の割引が適用されます。
他のキャリアも割引が多数存在しますので、ご活用される事をおすすめします。
精神障害者手帳2級のメリット④障害福祉サービスを受ける事ができる
精神障害者手帳を取得する最大のメリットとして、障害福祉サービスを受ける事ができる点にあります。
精神疾患により、発生する日常生活や社会生活の障害に対して
その障害の度合いに応じて、
都道府県が指定する福祉サービス事業者からサービスを受けることができます。
例えば、精神障害者手帳2級の判定例として
「部屋の掃除など清潔保持では自発的にできない」
状態があります。この場合は福祉サービスを活用して部屋の掃除や清潔保持のサポートを受ける事ができます。
障害福祉サービスでは主に、日常生活のサポートを行える介護給付と就職や日中活動のサポートを行える訓練等給付に分けられます。
利用にあたっては後述する、「障害福祉サービス受給者証」と「障害支援区分」の認定が必要となります。
ここから特に、精神障害者手帳2級の方が活用できる可能性の高いものをピックアップしてご紹介いたします。
日常生活をサポートする介護給付によるサービス
介護給付では主に、自宅での困りごとや通院や役所などへの移動時など日常生活のサポートが中心となります。
居宅介護(ホームヘルプサービス)
ホームヘルプサービスでは、障害の程度に応じてヘルパーさんが様々なサービスを行なってくれます。
大きく分けて4つのサービスがあり、
- 調理や自宅の掃除などを行なってくれる、「家事援助」
- 通院時の介助や窓口での手続きなどを行なってくれる「通院等介助」
- 入浴や食事などの介助を行う「身体介護」
- 生活全般の相談に乗ってくれる「相談サービス」
です。
特に精神障害者2級の方では、「家事援助」や「通院等介助」
の利用頻度が多くなるかと思います。
重度訪問介護
単独での生活が難しい方に対して、居宅介護では不十分な方が受けられるサービスがこちらの重度訪問介護となります。
居宅介護は30分単位の比較的短時間の利用を想定しているのに対して、重度訪問介護の場合は8時間までが基本と考え、24時間対応までできるようになっています。
居宅介護の4つのサービスに加え、
- 自宅から出かける際の支援を行う「移動介護」
- 介護に対応する見守りを行う「見守り」
なども含まれます・
さらに、2016年より入院先の病院でもサービスが受けられるようになりました。
社会生活をサポートする訓練等給付
介護給付では、主に自宅での生活でのサポートが中心でしたが
訓練等給付では、就職に関するサポートや日々生活する住居が含まれます。
こちらも精神障害者2級の方が利用する可能性の高いサービスについてご紹介いたします。
共同生活援助
日々の生活で、食事や掃除、そして介護などのサポートを受けながら住む事のできるサービスがこの共同生活援助です。
障害者グループホームなどと呼ばれています。
一般的に、一軒家などの住居で障害を持つ方が生活の場を一緒にしながら共同生活を行います。
世話人や生活支援員というスタッフが常駐しており、日々の生活のサポートを行なってくれます。
皆で食事などを共にする共有スペースと、一人一部屋与えられ生活を共にしますが
最近では、マンションタイプの施設や公営住宅タイプなどもあります。
一人で生活する事が難しい方は利用の検討をおすすめいたします。
自立生活援助
共同生活援助とは対照的に住み慣れた街でなんとか一人暮らししたいという方に役立つのが、この自立生活援助です。
スタッフが定期的に自宅を訪問し、食事や洗濯、掃除などの身の回りの手伝いから、各種お金の管理などを教えてくれながらサポートします。
ただし、最終的には一人暮らしが前提のサービスとなるため利用期間は1年となっております。
就労移行支援
障害を持ちながらも、民間企業への就職を考えた時に利用できるのがこの就労移行支援です。
就職に対する職業技能や、面接やエントリーシートのサポートなどを集中的に行なってくれます。
さらに就職後も、しっかりと働き続ける事ができるように就労定着支援という
職場への定着支援まで行なってくれます。
精神障害雇用で利用する就労パスポート
精神障害の就職では、通常の就職と異なりエントリー時に
就労パスポートという
自身の障害の特性や希望の働き方などを記載するシートがあります。
これにより企業側が、その方が精神障害と付き合いながら
どのような働き方ができるかを判断します。
企業側があくまでも障害に対して、そこまで詳しい訳ではありませんので
しっかりと就職の前段階で理解してもらうためにも重要なツールとなります。
作成にあたっては、就労移行支援のスタッフと一緒に作成したり
就労移行支援を利用しない場合は、ハローワークや地域障害者職業センターでも一緒に作成を行なってくれます。
精神障害者雇用の現状は以下の記事でより詳しく解説しています。
就労継続支援A型
民間企業での就職は難しく、ある程度の支援を受けながら働くための訓練を受ける場所が
この、就労継続支援となります。
他にも、就労継続支援B型というサービスがありますが、A型の方がより精神障害者2級の型にとっては利用頻度が高いためA型をご紹介いたします。
通常の会社で働くように、事業所と雇用契約を結んだ上で事業所が提供する仕事に従事します。
雇用契約を結んでいることから、最低賃金は保証され勤務日数によっては社会保険や雇用保険に加入する事ができます。
A型事業所の多くは、民間の企業が運営しているため仕事内容は多種多様です。
ホテルやレストランなどのサービス業から工場などの製造業、さらに最近ではIT系の職種もあり、
ご自身にあった仕事場を選ぶことができます。
一般企業への通過点として、活用するのが良いでしょう。
原則の利用対象者としては、
- 就労移行支援を利用したが就職に結びつかなかった方
- 一度就職したものの、退職してしまった人
などが対象です。
障害福祉サービスの利用方法
障害福祉サービスをどのように利用するかにあたっては、市役所に障害福祉課という課がありますので、そちらで所定の用紙をもらいます。
用紙に氏名や居住地、主治医、世帯収入(こちらは後述する利用料金にも関わってきます)を記載、提出します。
どの程度の支援を受ける事ができるかを決める障害支援区分
まず前提として、障害福祉サービスを利用しようとする人に対して、「障害支援区分」という
その障害に対して、どの程度の支援が必要か?
区分が確定されます。これにより、毎月どの程度のサービスを利用できるかが確定します。
1から6までの区分があり、数字が大きくなるほどサービスをより多く受給できます。
さらに生活に関わる介護給付のサービスによっては、ある一定の区分以上でないと利用できないものもあります。
(例えば、重度訪問介護だと支援区分4 以上が必要)
訓練等給付であれば、障害支援区分に関係なく利用することができます。
精神障害者手帳2級のメリット⑤医療サービスを受ける事ができる
福祉サービス以外にも医療サービスを受ける事もできます。
特に利用している方が多いでサービスをご紹介いたします。
精神科訪問看護
精神疾患で悩む方のご自宅に看護師が定期的に訪問を行い、サポートを行なってくれるのが
精神科訪問看護です。
サービスは看護全般に、柔軟に対応してくれ
お薬の管理や日常生活のサポート、リハビリ、
そして24時間の電話対応まで行なってくれます。
特に主治医からは見えずらい、自宅での状態を正確に把握する事で
治療に役立つことや、障害年金の申請時にも役立ちます。
積極的に活用すると良いでしょう。
精神科デイケア
生活能力や社会復帰のリハビリテーションを行なってくれるのが、この精神科デイケアです。
主に精神科などで実施され、集団で精神科が実施するリハビリプログラムを行なっていきます。
プログラムの内容としては、それぞれの精神科で特色があり
ソーシャルスキルトレーニングや心理教育はどこのデイケアでも行なっていますが、
例えば、カラオケや農園など楽しみながらリハビリを進めていけるのが特徴的です。
参考:大阪精神医療センター「精神科デイケア」
医療サービスの利用方法
精神科訪問看護や精神科デイケアの利用にあたっては、
精神科訪問看護にあたっては、主治医に希望の訪問看護ステーションを見つけた後に
訪問看護指示書の依頼を行います。
精神科デイケアについては、プログラムを主催している精神科であれば希望により利用することができます。
精神障害者手帳2級を持つデメリットについて
精神障害者手帳2級を取得するにあたって、何らかのデメリットがあるのではないかと気になっている方も多いのではないでしょうか?
結論から申し上げると、特に取得する事のデメリットはありません。
というのも取得したら常に携帯しておく義務はなく、手当の申請や
割引の際など必要な時のみ提示する形で構いません。
また、仮に企業で働いている場合でも
障害者手帳を取得したからといって申告する必要もありません。
障害を理由とした解雇などは法律で禁止されているためです。
参考:障害者差別解消法
ですので、積極的に取得することをおすすめ致します。
精神障害者手帳2級のメリットまとめ
いかがでしたでしょうか?
今回は、精神障害者手帳2級のメリットについてまとめました。
精神障害者手帳2級のメリットについては都道府県による差も大きく
まだまだ身体障害者手帳や療育手帳には及ばない点もあるため
新しいメリットが登場次第ご紹介致します。
注目 就労移行支援WithYou
精神疾患の就職支援・復職支援を行なっている就労移行支援事業所・リワーク施設。
大阪府・兵庫県の指定を受けて施設で関西圏を中心に支援を行なっています。精神疾患の就職・復職支援で数多くの実績を誇り、専門性の高いプログラムを提供しています。